トーン&マナー定義¶
このドキュメントについて
Maiden Phalanx のテキスト・ビジュアル・音楽に適用される雰囲気のガイドライン。 世界設定・キャラクター設定の全ての前提となる「北極星」として機能する。
DP-1: トーン&マナーは世界設定に先行して確定する(PRD #67)。
1. トーンの核心¶
一言で表すなら¶
「夜明け前が最も暗い」
世界は過酷で、少女たちは傷を負っている。しかしプレイヤー(指揮官)と出会うことで、彼女たちは再び立ち上がる。闇が深いからこそ、救済の光が際立つ。
トーンの三本柱¶
| 柱 | 説明 | バランス |
|---|---|---|
| 厳しさ(Severity) | 脅威は本物であり、犠牲も存在する。世界を甘く描かない | 60% |
| 温もり(Warmth) | キャラクター同士の絆、信頼、思いやりが確かに存在する | 30% |
| 希望(Hope) | どれほど暗い状況でも、プレイヤーの選択が未来を変えられるという確信 | 10% |
設計意図: 60-30-10 は印象の比率であり、テキスト量の比率ではない。プレイヤーが世界を「厳しいが、希望はある」と感じるための目安。厳しさが土台にあるからこそ、温もりと希望が際立つ構造。
参考作品(トーンのベンチマーク)¶
| 作品 | 参考にする要素 | 取り入れない要素 |
|---|---|---|
| メイドインアビス | 美しい世界の裏にある容赦ない過酷さ。「可愛い見た目 × 残酷な世界」の対比 | 救いのない結末。本作は必ず救済がある |
| 魔法少女まどか☆マギカ | 少女が過酷な運命に巻き込まれる構造。日常と非日常の落差 | 円環の理のような抽象的な救済。本作の救済はもっと直接的(仲間になる) |
| NieR:Automata | 哲学的な問いを纏った切ないトーン。戦いの中で芽生える感情 | ニヒリズム。本作は最終的に肯定的な結末に辿り着く |
| Fire Emblem 風花雪月 | キャラクターの背景にある傷と、その克服の物語。支援会話の構造 | ルート分岐による対立。本作は全員を救える構造 |
| フロムソフトウェア作品(DARK SOULS, Elden Ring) | 断片的な語りで世界の過酷さを伝える手法。説明しすぎない美学。環境ストーリーテリング | 理不尽な難易度設計。本作はパズルとして「解ける」ことが前提 |
| トライアングルストラテジー | 重い政治的決断と道徳的ジレンマ。戦術ゲームにおけるシリアスなナラティブの成功例 | マルチエンディング。本作はハッピーエンド一本道 |
2. テキスト・トーン指針¶
2.1 文体¶
| 要素 | 方針 |
|---|---|
| 地の文 | 三人称視点。簡潔で叙情的。過度な修飾語は避け、状況と感情を的確に伝える |
| キャラクター台詞 | キャラクターごとに明確な口調の差を設ける。ただし全員に共通して「芯の強さ」を感じさせる |
| 指揮官(プレイヤーキャラ) | 冷静で理知的だが、感情を押し殺しているわけではない。的確な判断と、部下を思う温かさの両立 |
2.2 暴力描写レベル¶
レベル: 中〜中高(Moderate-Heavy) — Fate/stay night ライン
世界の過酷さを真剣に描くが、ビジュアル上の残虐描写には踏み込まない。プレイヤーの想像力に委ねるほうが印象として強いダークさを生む(フロム作品の手法)。かつ、DLsite での「猟奇」タグ回避と Steam 審査リスク低減の商業的メリットがある。
許容する表現¶
| 表現 | 演出上の目的 |
|---|---|
| 流血・戦闘傷の描写 | 戦闘の緊張感と犠牲の重みを表現する |
| 死の重みを感じさせる演出 | 世界の過酷さ。ただし味方キャラの恒久的な死はない |
| 捕囚・虐待の状況描写(「彼女は囚われ、傷つけられていた」) | ボスに囚われた少女の境遇の深刻さを示す |
| テキストでの示唆的な暴力描写 | プレイヤーの想像力に委ね、より深い恐怖を生む |
| ボスの圧倒的な脅威感の演出 | 敵の恐ろしさを「結果」で伝える(荒廃した環境、怯える NPC 等) |
許容しない表現¶
| 表現 | 理由 |
|---|---|
| 四肢切断・欠損のビジュアル描写 | 猟奇タグの対象となり、コアターゲットを排除するリスク |
| 拷問・虐待の過程のビジュアル描写 | 状況は語るが過程は見せない。結果と示唆で十分に深刻さは伝わる |
| 内臓・断面の描写 | 本作のダークさの上限。これを超えるとジャンルが変わる |
| グロテスクを目的とした描写 | 暴力は手段であり目的ではない(§5.3 NG パターン参照) |
原則: ビジュアルは抑制し、テキストで示唆する。「何が起きたか」はプレイヤーに伝わるが、「どう起きたか」の視覚的詳細は見せない。環境描写・結果描写・キャラクターの反応で暗さを表現するのが本作の手法。
2.3 感情表現の範囲¶
| 感情 | トーンにおける位置づけ |
|---|---|
| 恐怖・絶望 | 許容。ただしそこに留まらない。必ず「立ち向かう意志」への転換点を設ける |
| 悲しみ・喪失 | 許容。過去のトラウマ・失ったものへの悲嘆は、キャラクターの深みを作る重要な要素 |
| 怒り | 許容。理不尽への正当な怒りはキャラクターの芯の強さを示す。ただし暴走・復讐への固執は「克服すべき課題」として描く |
| 喜び・安堵 | 重要。厳しい状況の後に訪れる小さな幸せは、プレイヤーの感情的報酬。意図的に配置する |
| 愛情・親密さ | 許容。キャラクター間の信頼と絆が物語の推進力。ただし全年齢版では性的描写に踏み込まない |
2.4 ユーモアの位置づけ¶
ドライウィット(乾いた知性的なユーモア)を基調とする。
| 方針 | 詳細 |
|---|---|
| 基調 | 気の利いた軽口、皮肉の効いた一言、状況を的確に突く鋭い観察。キャラクターの知性が感じられるユーモア |
| 配置 | シリアスなシーンに限定しない。日常会話の中に自然に織り込む。緊迫した場面での冷静な軽口(キャラクターの余裕や強がりの表現として)も許容 |
| 許容するユーモア | キャラクター同士の軽口、自嘲的なジョーク、状況の皮肉さを指摘する台詞 |
| 避けるユーモア | メタ発言(第四の壁破壊)、スラップスティック、キャラクターの尊厳を損なうギャグ、下品な身体ギャグ |
参考イメージ: フロム作品の NPC が淡々と語る中に滲む皮肉。トライアングルストラテジーの政治劇における辛辣な応酬。
3. ビジュアル・トーン指針¶
3.1 全体の色調¶
| 要素 | 方向性 |
|---|---|
| ベーストーン | 暗めの彩度抑制(ダークファンタジーの重厚感)。ただし真っ黒にはしない — 深い紺、チャコール、深緑を基調とする |
| アクセント | キャラクター自身は鮮やかな色彩を持つ。暗い世界の中で少女たちが「光」として際立つ対比構造 |
| 光源 | 薄暮・夜明け・松明・魔法光など、限定的・劇的な光源を好む。均一な昼光は避ける |
3.2 雰囲気のキーワード¶
- 重厚(Weighty) — 軽薄さのない、地に足のついた世界観
- 耽美(Aesthetic Beauty) — 残酷さの中にも美を見出す。廃墟の苔、血に染まった花弁、月光に照らされた剣
- 対比(Contrast) — 闇と光、過酷さと優しさ、怪物と少女。対比こそが本作のビジュアルアイデンティティ
- 生命力(Vitality) — 少女たちのデザインには「生きようとする力」を感じさせる要素を入れる。決して無気力ではない
3.3 キャラクタービジュアルの方向性¶
| 要素 | 方針 |
|---|---|
| 立ち絵・イベントCG | 7〜7.5 頭身。エロゲ標準の頭身で、CG 映えと表情の演技力を両立する |
| 戦闘画面 | SD キャラ(2〜3 頭身)。デフォルメによるモードチェンジで「日常 ↔ 戦闘」の視覚的区別を明快にする |
| 衣装 | 世界観に根ざした機能的なデザイン。過度な露出は避けるが、キャラクターの個性は衣装で表現する |
| 表情 | 感情の幅を豊かに表現する。「戦闘時の厳しい顔」と「日常の柔らかい顔」の差が重要 |
| 傷・痣 | 過去のトラウマを視覚的に示唆する小さな傷や痣は許容。注意深く見ると気づく程度の控えめな表現 |
3.4 背景・ステージビジュアルの方向性¶
| 要素 | 方針 |
|---|---|
| 自然物 | 美しいが人間には厳しい自然。鬱蒼とした森、凍てつく洞窟、朽ちた遺跡 |
| 人工物 | かつての繁栄の痕跡。崩れた橋、読めなくなった碑文、蔦に覆われた城壁 |
| 脅威の視覚化 | 敵の支配下にある領域は色調が歪む・空気が淀むなどの視覚的表現で不穏さを演出 |
3.5 参考作品(ビジュアルのベンチマーク)¶
| 作品 | 参考にする要素 |
|---|---|
| Darkest Dungeon | 暗い色調と劇的な光源。ストレスと重圧を視覚で伝える手法 |
| オクトパストラベラー | HD-2D の美しさ。限られたグラフィック表現で深い雰囲気を作る手法 |
| Ender Lilies | 退廃的な美しさ。崩壊した世界の中で少女が佇むビジュアルの力 |
| ヴァニラウェア作品(十三機兵等) | 繊細で耽美なキャラクターアート。2D イラストの表現力 |
| フロムソフトウェア作品(DARK SOULS, Elden Ring) | 環境で語る世界観。朽ち果てた建造物、不気味な静寂、光と闇の劇的な対比 |
| トライアングルストラテジー | HD-2D での戦術ゲーム表現。ミニチュア的な戦場と重厚な物語の共存 |
4. 音楽・サウンド・トーン指針¶
注記: 音楽はMVPスコープ外だが、方向性だけは定義しておく。
| 要素 | 方向性 |
|---|---|
| 基調 | アコースティック楽器(弦・木管)を基調としたオーケストラ寄りのサウンド |
| 戦闘BGM | 緊迫感と高揚感。ただし「熱い」よりも「張り詰めた」寄り。パズルの思考を邪魔しない |
| 日常BGM | 穏やかで温かみのある曲調。弦楽器のアルペジオ、静かなピアノ |
| ボス戦BGM | 脅威と悲しみを同時に感じさせる。ボスは「倒すべき敵」であると同時に「救うべき少女」であることを音楽でも表現する |
| 避けるもの | EDM・テクノ等のデジタルサウンド、過度にポップな曲調、メタル系の攻撃的なサウンド |
5. 「ダーク」と「ハッピーエンド確定」の両立¶
5.1 両立の原則¶
「暗さ」はゴールではなく、コンテキストである。
ダークな要素(脅威、犠牲、トラウマ)は、ハッピーエンドの価値を最大化するための舞台装置として機能する。闇が深いほど、そこから救い出す行為のカタルシスが大きくなる。
5.2 具体的な両立手法¶
| # | 手法 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | 「救済保証」の構造的担保 | ゲームシステムとして「全ボスは仲間にできる」ことが保証されている。ナラティブ上のバッドエンドルートは存在しない。プレイヤーは「必ず救える」と信じてプレイできる |
| 2 | 過去は暗く、未来は開ける | キャラクターの背景(過去)は暗くてよい。しかし物語の進行方向(未来)は常に希望に向かう。回想シーンと現在のシーンでトーンに明確な差をつける |
| 3 | 苦しみの意味づけ | キャラクターが経験した苦しみは、成長や絆の深化につながる。意味のない苦しみ(=ただ辛いだけ)は描かない。Pain → Growth → Bond の流れを常に意識する |
| 4 | ダークさの上限設定 | 「取り返しのつかない喪失」は原則として描かない。村が焼かれても再建できる。仲間が傷ついても回復できる。プレイヤーが無力感だけを感じる展開は避ける |
| 5 | 光の配置 | 暗いシーンが続く場合、必ず「ブレイクポイント」(日常の温かいシーン、小さな勝利、キャラクターの笑顔)を挿入する。3つの暗いビートに対して1つの明るいビートを配置する目安 |
5.3 NG パターン¶
| NG パターン | なぜダメか |
|---|---|
| キャラクターが救われないまま退場する | ハッピーエンド確定の原則に違反。全キャラクターに救済の道筋が用意される |
| 「全てが無意味だった」系のオチ | ニヒリズムの否定。プレイヤーの行動には必ず意味がある |
| 暴力描写が自己目的化する | 暴力は脅威の深刻さを伝えるための手段。「残酷だから面白い」の構図は取らない |
| コミカルさで暗さを中和する | ダークさは中和するのではなく、救済で昇華させる。トーンの切り替えで逃げない |
| プレイヤー(指揮官)が無力なまま放置される | 指揮官は能動的に問題を解決する存在。傍観者にならない |
6. 全年齢版と成人版のトーン差異¶
6.1 基本方針¶
トーンの骨格は同一。差異はコンテンツの「深度」のみ。
全年齢版と成人版で世界の暗さや物語の構造が変わることはない。変わるのは親密度イベントにおける描写の深度だけである。
6.2 差異の範囲¶
| 要素 | 全年齢版 | 成人版 |
|---|---|---|
| メインストーリー | 同一 | 同一 |
| 戦闘演出 | 同一 | 同一 |
| キャラクター設定 | 同一 | 同一 |
| 世界の暗さ | 同一 | 同一 |
| 親密度イベント(♥1〜♥4) | 同一 | 同一 |
| 親密度イベント(♥5) | キス・ハグを含む接触描写、感情的クライマックス → 暗転 | 性的描写を含むイベントCG+テキスト |
| イベントCG | 全年齢版用CG(構図は同一、露出度の異なる差分) | 成人版用CG |
6.3 成人版コンテンツのトーンルール¶
成人版の性的コンテンツも、本ドキュメントの全体トーンに従う。
基調: 「行き過ぎた純愛」¶
本作の成人コンテンツは「行き過ぎた純愛」を基調とする。ヒロインたちは強く、自らの意志で主人公(指揮官)に迫る。主人公は異世界に転生してきた存在であり、ヒロインたちの圧倒的な愛情に巻き込まれる構図(いわゆる「逆レイプ」)を基本フォーマットとする。
| 方針 | 詳細 |
|---|---|
| ヒロイン主導 | ヒロインが積極的に主人公に迫る。彼女たちの強さ・能動性がそのまま親密度シーンにも反映される |
| 動機は純愛 | ヒロインの行動の根底にあるのは、指揮官への真摯な愛情・執着。嗜虐や支配欲ではない |
| キャラクターの尊厳 | 性的シーンにおいてもヒロインの人格と意思が最大限に表現されている。消費的・対象化的な描き方は避ける |
| 感情的文脈が先行 | 肉体的描写の前に、感情的な経緯(なぜこの二人がこの関係に至ったのか)が親密度イベントを通じて十分に積み上がっている |
ハードルール¶
| ルール | 詳細 |
|---|---|
| NTR(寝取られ)禁止 | 絶対的禁止事項。主人公とヒロインの関係は排他的信頼の上に成り立つ。第三者による横恋慕・奪取は描かない |
| ハーレム許容 | 複数のヒロインが主人公に好意を持ち、親密度イベントに至ることは許容される。ヒロイン同士の対立ではなく共存(あるいは競い合い)として描く |
| 暴力的性行為の禁止 | 「行き過ぎた純愛」であって暴力ではない。身体的危害・恐怖を伴う描写は禁止 |
| ジャンル | ロマンティック〜耽美寄り。ハードコア・フェティシズム特化ではない |
参照リンク¶
| ドキュメント | リンク |
|---|---|
| GDD | docs/gdd.md |
| 世界観・キャラクター PRD | Issue #67 |
| 本 Issue | Issue #238 |